「挑戦は一歩、土台は一生」―人と場から学ぶー
玉袋筋太郎×富田太郎対談
#自己実現 #共創 #ナオヨシ
2025年10月
ナオヨシ社内報19号の表紙撮影が縁で実現した今回の対談。
お笑い芸人でありながら、スナックの経営者としての顔も持ち、昭和の大衆文化・酒場文化を愛する玉袋筋太郎さん(玉さん)と、ナオヨシ株式会社の富田COO。
スナックは、年齢も立場も越えて人と人が向き合える場所、そこから見えてくる人間関係の本質や変化の時代にどう成長し続けるか、笑いあり、ときに深く人生を語る本音トークが展開されました。
八百万の神とスナック道

富田COO
スナックは年齢とともにいくようになりましたね。

玉さん
若い頃はキャバクラにいきたいもんですよ。でもある時気づくんですよ、キャバクラやクラブは楽しいけど、続けられるもんじゃないってね。俺ね、飲み屋の勘定も全てはお賽銭だと思ってるの。スナックは、少ないお賽銭で人間関係という素晴らしいものを見せてくださるご利益が、自分に還ってくるところですよ。

富田COO
スナックはどんなに小さな町にも必ずあって、地域に根付く文化がありますしね。

玉さん
そう、北は北海道、南は九州、沖縄まで。日本には八百万の神がいて、どの町を訪ねても参拝したくなるじゃないですか。スナックはまさにそんな感じ。神社に神道があるように、スナック道もあるんですよ。

富田COO
神社は手を合わせてお願いもあるけど、感謝をする場でもあります。スナックで色んな人と話をしてると、感謝の気持ちをすごく感じられます。

玉さん
なおかつ土地土地で地場のエネルギーをもらえる、日本中にある一番身近なパワースポットですよ。
新人研修をスナックで?

玉さん
スナックって入口に料金表がなくて不安がられるけど、長く続いている店でぼったくるなんてことはないんですよ。「お邪魔します」って気持ちで入れば大丈夫。謙虚さを身に着ける学校でもあるんだし。

富田COO
確かに学校ですね。長く続く店は整理整頓ができていて、トイレまで掃除が行き届いている。それは会社も同じで、ベースがしっかりしているところは続くんです。人との交流があって、いろんな気づきも得られる。スナックの雰囲気がある職場って、結構、長く続くんじゃないかな。

玉さん
新人研修で山ごもりもいいけど、スナックで働いた方が絶対に学べる。色んなタイプのお客さんがいるからさ、マニュアルの教えじゃないからさ、前後のかわしと攻めだけじゃなくてさ、横にかわす動きが入って覚えられるしさ、臨機応変に対応する力が身につくんですよ。

富田COO
いいですね、そのアイデア。
お互いに謙虚さと礼儀を持ちながら、それでもって人間性も学べる所がものすごくいいです。

玉さん
酒離れとか車離れとか。いろんな若者の離れがあるけど、スナックっていう業界もそれ。だけどさ、このスナックを体感するのとしないとじゃ人生の深みがさ、もったいないと思って。1回行ってみて嫌だったとしても、経験値があがるわけだから。経験せずにSNSみたいなところへ誘導されちゃう若者が多いのに、危機感を感じてますよね。

富田COO
おっしゃる通りです。ネット情報が優先されて、食わず嫌いになってると思うんです、若い頃にしか経験できない事があるのに。

玉さん
今は一手間二手間を全て無くして、最短距離ばっかり選ぶだろ。便利なんだろうけど、一回ちょっと手順を足してみる経験をやらないのが勿体ないって言いたいんですよ。気づきってのは、スナックとか人と触れ合う場所にあって、スマホ上にはあんまりないような気がすんだよね、俺は。
去年の自分を超えて、根っこを生やす

富田COO
ナオヨシの行動指針は、「最初から諦めないこと。自分らしさを忘れないこと。去年の自分より成長すること。 」です。代表が大事にしているのは、子どもの頃の無邪気さ。大人になるにつれて、社会のルールや人間関係でどんどん狭くなって、自分らしさを失い、いろんなことを諦めてしまう。でも、ルールを守りながらも無邪気さや自分らしさを大事にする生き方こそ、年齢を重ねても価値のある生き方なんじゃないか、と考えておりまして。ただ、それだけでは我がままになっていく可能性もあるので、「去年の自分より成長する」を課しているんです。

玉さん
なるほどね。耳が痛いな。出来ていないからさ、そういうこと。

富田COO
出来ていないから、それを行動指針にしたところもあります。

玉さん
若けえ頃は、一生懸命ガムシャラにやったって世間は振り向いてくれない時期があったけど、今やってることが諦めきれずに続けてきたことで、それでおまんま食えるようになって、家にも住めて、息子を育て上げたからよ。
マラソンってトレーニングしねえと絶対に結果が出てこねえんですよ。自分は小中学校の夏休みの宿題、冬休みのも一切出したことないし、運動もしない帰宅部。それが初めて30代ぐらいで走りだしてさ、俺が選手。俺がコーチ。俺が監督。レギュラーも俺。だから「俺部」。昨日より1秒、たった1秒だけど、その1秒ってのを達成する積み重ね、それは自分にとって成長だったと思うんですよ。

富田COO
積み重ねていくことが大切で、いきなり成長はしないですよね。
だから、去年の自分よりも成長することを繰り返して、50年生きたら50回成長するぐらいじゃないと。

玉さん
やっぱ根っこが生えるからさ。修行を単なる苦労っていうことで片付けるんじゃなくて、人間的にいい根っこが生えてくるから。

富田COO
若い時の経験や失敗は、歳を取った時の失敗よりも価値が大きい。だからこそ若いうちに積極的に挑戦していただいて、失敗も含めてたくさんの経験をしていただくことを会社として認めたいですね。

玉さん
こう、芸人の匂いってやつが出てるやつが好きなんですよ。
俺の芸名、どうしたってコンプライアンスなんかアウトですよ。苗字もダメ。下もダメ。だけど、こうやってどうにか40年近く生き延びているっていうのは、生き方、生きる術を覚えてきたというか。この芸名でまだ生きてるってことが、俺の中では成長なんですよ。
最短距離だけが正解じゃない

富田COO
社会人になった時パソコンがギリギリない世代、携帯電話も社会人になってから持った世代になるので、飛び越えることができなかったんですよ。今と比較すると何でも手間暇かけて苦労しなければならなかった。

玉さん
今みたいな話をしてるとさ、すぐ老害って言われちゃうからさ。

富田COO
会社に限らずですけど、本当に苦しい時っていうのが何度かありまして。そこを乗り切れるのは、結局苦しい経験をしたことのある人だと思うんです。我々の世代は苦しいことを経験するのを良しとする世代だったんで、その過程を飛ばして最短でやってきた人たちが、本当に苦しい時にどういう対応をするのかと思う事もあります。

玉さん
若い人たちは、最短距離求めっからさ。
ネットで人がおいしいって書いた店へくわけじゃない。それってはずれを経験しないショートカットだろ。そこが狡いって俺は言いたいわけよ。もったいねえって。スナックもそうで、はずれも当たりだっていう経験値が上がるわけだから、そこは怖がらず扉を開けろよと思うんですよ。

富田COO
若手には思い切ってやれよって思うんですけど、あまりにもいろいろとショートカットしすぎてきたから、一歩が踏み出せない側面もあるんでしょうね。

玉さん
そこはさ、俺たちが、世代が違う人に最短距離を求めない良さをさ、うまく伝えられる技術を上げていくっていうことも成長だからさ。

富田COO
変化できるものが生き残っていくっていうのは、これは何歳になってもそう思うので、成長しなきゃいけないし、去年の自分よりも成長するぐらいがちょうどいいのかなと。

玉さん
こっちも成長しないでさ、言ってるだけじゃねえかって言われちゃったら、恥ずかしいもんな。
根っこは深く、挑戦は大胆に

富田COO
いろいろな能力を持った人間が同じ方向に向かっていくには、同じ理念、同じビジョンを共有することが重要でして。

玉さん
根っこは持っとけよと。

富田COO
まさに、ウチの会社の根っことしての行動指針を明確にしてますし、百年続くインフラを自分たちで作っていこうという理念もあります。
それに、CEOは“自由にやれ、責任はとる”という人でして、彼の人間性に惹かれて集まってくる人も多いんです

玉さん
それは覚悟がある人だと思いますよ。うちの師匠もそうです。だけど、常にくっついてると竜宮城になっちゃうんですよ。だから、漫才じゃないことでも活躍する。その評判が師匠の耳に入ってさ、お前らよくやってんなって言われるとやっぱ嬉しいわけよ。

富田COO
どうしても状態がちょっと良くなると、人間って歩みを止めるんですよね。

玉さん
自分たちの努力を怠けて、竜宮城がなくなったら爺さんになっちゃうだけですよ。だから僕らは漫才やったり、連載を十誌やったり、他の人が絶対やらねえことをやってたんですよ。きつかったですよ、その時期は。うちの師匠も自由にやっとけよって感じだったからできたんじゃないですかね。まだ分かんないですよ。レースは続くから。

富田COO
うちの社員の中にも、こういう話をきいて、もっと挑戦しなければと気づく人は多いと思うんですよ、そういう人材が集まっているし。会社もまだ成長過程で頑張っていますし。

玉さん
人間ってのは老いてくもんだからさ、もう若い頃にはかなわねえ。58にもなると“もう成長できねえかな”って思う自分もいる。でも、いやまだできるかもって気持ちもあるんだよね。読書しても記憶力は落ちてきて“あれなんだっけ”が増えるんだけど、そこは今までの人生で身につけたテクニック、インサイドワークでカバーできる。プロレスで言えば、ガチガチの殴り合いじゃなくて、うまくクリンチしたりボディ入れたり、そういう戦い方を覚えてくるわけ。だから若い社員のみんなは、まだまだ体力も気力もあるんだから、恐れずにどんどん挑戦してほしいと思いますよ。

富田COO
金融機関に勤めていた頃は、お金を貸す側・投資する側でした。でも事業会社に入ったら、逆の立場になりまして、こんなにギャップがあるとは思わなかったんです。だから、銀行時代に社長さんたちにちょっと生意気な口をきいてたなと、今さら申し訳なく思います。

玉さん
でも後悔ってのはさ、気づきがあるからいいんだよ。気づかねえやつは一生そのまんま。だけど「あの時そうだったな」って反省できるのは、成長してる証拠ですよ。

富田COO
逆の立場になると、景色が全然変わるんですよね。

玉さん
それ、俺も同じ。ずっとスナックの客だったけど、自分が経営する側になったら、全く違う世界が見えてきた。偉そうにしてた人の気持ちも、逆にわかっちゃう。笑えるよね。でも両方を経験できたら、それはそれで幸せな人生かもしれない。

富田COO
結局、表裏一体なんです。その両面を理解した上で話せるような経験値を積みたいですね。

玉さん
その経験値を積むならやっぱスナックが一番だよ。土方だろうが社長だろうが、同じカウンターに並ぶんだからさ。

富田COO
貴重なお話をありがとうございました。会社の中にスナックを作ろうかな。

玉さん
スナック玉ちゃん、名前貸しで〇〇円!フランチャイズフィー(笑)

